ボブ・ディラン脳


今週、月曜日に報じられたタブレットのジョナ・レーラーの記事は瞬く間にアメリカ出版界の一大スキャンダルとなった


ジョナ・レーラーが3月に出版した「Imagine:How Creativity Work」という本の中で彼が引用したボブ・ディランの言葉が捏造されたものだとタブレットのマイケル・C・モイニハンが記事にした。

Jonah Lehrer’s Deceptions (Tablet)
ボブ・ディランの発言をねつ造、米報道界の若きスターが認める(AFP)


レーラーは、

1965年のイギリスツアーの後、ディランはウッドストックの家に引きこもって辞めることを考えていた。その後、ディランが音楽制作を止めると決心したとき、奇妙な感じがした。説明するのが難しいが…後にディランはこの時の事(奇妙な感じ)を「何か言うべき事があるという感じだ」と語った。

と書いた。

しかしそのような事をディランが言ったという記録はどこにも無かった。

本を読み疑問に思ったディラン・ファンでもあるモイニハンが調べた。
(例えばこれ↓300のインタビュー、1,300ページ以上ある)





しかし、そのような記述はどこにも無かった。

3週間前、モイニハンはこの件についてレーラーに直接メールを送った。レーラーはディランのマネージャー、ジェフ・ローゼンの許可を得て見た「No Direction Home」の未公開部分から引用したと言ったが、そのような事実は無かった。

そして記事が出る前日、レーラーはモイニハンにそれが嘘だった事を認めた。メールを受け取り気が動転して嘘をついてしまったと告白した。

31歳、新進気鋭のサイエンス・ライター、3冊の本を出し、ウォルストリート・ジャーナル、ワイアード、ニューヨーカーなどに寄稿する超売れっ子ライター、6月にはニューヨーカーの専属ライターとなり超一流ライターへの道も約束されたかに思えた矢先の事件。「Imagine」は電子版と合わせて既に20万部売れていたが、出版社は本の販売を停止した。またレーラーもニューヨーカーのスタッフ・ライターを辞任した。

この「Imagine」は、スティーブ・ジョブスやディランといった人々が興味を引きやすいサンプルを選んだおかげか発売当初とても話題になった。これは、本人が書いたガーディアンの記事だが

The neuroscience of Bob Dylan's genius
(ボブ・ディラン、天才の神経科学)

この記事の下にあるコメントに「Bob Dylan is not a genius; talented, yes, but not a genius.」といのがあるが、レーラーにとってディランが実際、天才かどうかなんて実はどうでもいい事だ。問題は自分の描いたモデルに忠実なサンプルか否かということだ。なのでこのような事が起こってしまったのだろう。

いみじくも、先日、ディランが「ソングライターはそれが真実かどうかなんて知ったこっちゃ無い」と言っていたが、それは小説家だから許される事で、残念ながらノンフィクションの世界では一発退場となってしまう。


上の動画でも言われてるが、10のうち1つでも間違いがあればそれで終わりだ。ましてレーラーの場合は科学分野。その上彼は、この問題以前にself-plagiarism(自己剽窃:じこひょうせつ:自分が過去に書いた文章を、新しい文章の中で再利用する行為)が問題になっていた。
(因みに全く関係無い話だが…良く「圧力がかかる」などと言われるが実際はほとんどの場合「自主規制」だ。この上の動画で少し前のところで言ってるとおり)

当然、今回の件にディランは全く関係無いが、"On Bob Dylan And Jonah Lehrer, Two Fabulists" や "Freewheelin’: Bob Dylan, Jonah Lehrer and the Truth" というのは良くわかる。


やっぱり、脳科学関連は…なんて事は言わない(笑)。ギークなところに押し込められず、せっかく表舞台に出てきたサイエンス・ライターなのに残念なことだ。




Imagine (PDF)










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